企業寄付・従業員寄付の目的を定義する方法論
寄付活動は多くの非営利団体や慈善団体にとって重要な資金調達手段です。成功するファンドレイジングキャンペーンの鍵は、その目的を明確に定義することにあります。この記事では、寄付の目的を定義する重要性、効果的な方法、具体的なステップについて詳しく解説します。
寄付の目的を定義する重要性
寄付をする企業の背景
寄付の目的は多岐にわたりますが、その背景には主に以下のような種類があります。
プロジェクトベースの目的
特定のプロジェクトやプログラムのための資金調達です。例としては、新しい施設の建設、特定の研究プロジェクトの資金、緊急支援活動などが挙げられます。
継続的な運営資金
支援する特定のテーマ・慈善団体の日常運営や基礎的な活動を支えるための資金です。スタッフの給与、事務所の賃料、日常的なプログラムの運営費などが含まれます。
緊急人道支援
自然災害や危機的状況に対する緊急支援のための資金調達です。迅速な対応が求められるため、迅速かつ効果的な目的設定とファンドレイジングの開始が求められます。
長期的な戦略的資金
将来的なビジョンやミッションを達成するための長期的な資金調達です。組織の成長や持続可能性、企業として目指すパーパス・ビジョン・ミッションを支えるための取り組みの一環として寄付金を集め、贈呈することが目的です。
企業活動の中での寄付の位置付け
透明性のある目的設定は、企業のステークホルダーとの信頼関係を構築します。ESG、SDGs、サステナビリティ、CSR/CSV経営の推進といった、様々な背景・目的があろうかと存じます。そこで、御社がどのような背景・目的で寄付を考えるに至ったのか、それを基にどのようなゴールを達成したいのかのビジョンを明確にすることが重要です。
下記に、企業活動の中での寄付の位置付けのパターンを整理しました。参考になれば幸いです。
NO | 目的 | 内容 | 備考 |
❶ | 社会貢献活動 | 企業の社会的責任(CSR)を果たし、社会全体の利益を促進する活動。 | 災害・紛争などの緊急人道支援など |
➋ | ブランドイメージ向上 |
企業のブランドイメージを向上させ、顧客・生活者・消費者からの支持を得るための活動。 |
|
❸ | 従業員エンゲージメント | 従業員の士気を高め、企業へのロイヤルティを向上させるための活動。 | チャリティーサークルや労働組合などを含む |
❹ | 税制優遇措置 | 寄付に伴う税制上の優遇措置を享受し、財務上のメリットを得るための活動。 | |
❺ | コミュニティ支援 | 企業が拠点を置くコミュニティを支援し、地域社会との関係を強化するための活動。 | 企業版ふるさと納税など |
❻ | 顧客関係の強化 | 顧客との関係を強化し、信頼性を高めるための活動。 | |
❼ | サステナビリティ戦略 | 持続可能な社会の実現に向けた長期的な戦略の一環としての活動。自社のESG、SDGs、サステナビリティなどの方向性との整合性が求められる。 | 自社事業では経済合理性を成立させられない取り組みに寄付をすることでパーパスを表現する |
❽ | 危機管理・リスクマネジメント | 企業が危機的状況に対処し、リスクを管理するための活動。 | レピュテーションリスクの低減・解消を目的とするもの |
このような背景・目的から逆算すようにして議論を進め、自社としてどのような企業寄付・従業員寄付に取り組むべきなのかを検討します。
寄付者(従業員)の動機づけ
寄付者は明確な目標が提示されることで、寄付の意義を理解し、寄付する動機を強く感じます。具体的な目標は、寄付者に対してその寄付がどのように使われるのか、どのような変化をもたらすのかを示します。
特に、従業員寄付に取り組む企業の場合は、先述の”企業活動の中での寄付の位置付け”にあるような内容と方向性を透明性ある形で説明することで、どのような目的で何に寄付金が使われるのか?を理解することができるため、より納得感ある気持ちと姿勢で企業の寄付と向き合うことができるようになります。
企業の寄付の目的を定義するステップ
企業のパーパス・ビジョン・ミッション(サステナビリティ、ESG、SDGs、CSRなどを含む)との整合性
企業寄付の目的は、企業の社会的責任や方向性と整合している必要があります。企業のCSR戦略に基づいて、どのような社会問題に対して寄付を行うのかを明確にします。
ステークホルダーのニーズの把握
企業のステークホルダー(従業員、顧客、地域社会など)のニーズを把握し、それに応じた寄付の目的を設定します。ステークホルダーの期待に応えることで、企業の信頼性を高めることができます。
特に従業員を巻き込んだ寄付を検討される際には、従業員からの寄付先の提案や投票など、企業寄付のプロジェクトに従業員中心のアクションと仕組みを取り入れることを推奨します。
企業の強みとリソースの評価
企業の強みやリソースを評価し、それを活用した寄付の目的を設定します。例えば、技術系企業であれば、技術を活用した教育支援プロジェクトを従業員プロボノ・ボランティア活動と組み合わせた企業寄付などが考えられます。
具体的な目標の設定
上記の情報を基に、具体的な寄付の目標を設定します。SMARTゴールの原則に従って、達成可能な目標を明確にします。
明確な目的が設定されると、寄付活動が効率的に行われます。担当者は目標に向かって効果的に働くことができ、資金調達の成果を最大化することができます。
効果的な目的設定には、SMARTゴールの概念を取り入れることが有効です。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)が設定された目標を意味します。
- Specific(具体的): 目標は具体的であるべきです。例えば、「100人の子どもに教育資金を提供する」というように明確にします。
- Measurable(測定可能): 目標の達成度を測定できるようにします。例えば、「6ヶ月以内に1,000万円を集める」というように定量的に設定します。
- Achievable(達成可能): 現実的に達成可能な目標を設定します。過去のデータやリソースを考慮して設定します。
- Relevant(関連性): 目標は組織のミッションやビジョンに関連しているべきです。
- Time-bound(期限が設定された): 目標には明確な期限を設定します。例えば、「2024年12月末までに達成する」といった形です。
上記のようなゴール設定に基づき、企業としてのゴールを設計することは、寄付を集める側と寄付金を出す側の思いをより一致団結させることの一助となります。
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