従業員エンゲージメント向上のための企業寄付・従業員寄付
従業員の士気を高め、企業へのロイヤルティを向上させるための活動。チャリティーサークルや労働組合などを含みます。
企業が従業員エンゲージメントを向上させることは、組織の成功に直結します。そのための戦略の一環として、社会貢献活動を活用する企業が増えています。本記事では、企業寄付と従業員寄付を組み合わせることで、従業員エンゲージメントをどのように向上させられるかを具体的に解説します。
従業員エンゲージメントとは?
概要と重要性
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の目標や価値観に対してどれだけ情熱を持ち、貢献意欲を感じているかを指します。エンゲージメントが高い従業員は、業務効率が向上し、企業にとって重要な資産となります。
データで見る、エンゲージメントの企業経営への影響
企業の利益増加率の向上
従業員エンゲージメントが高い企業は、低い企業に比べて1年後の営業利益率の伸びが大きい。特に「持続可能なエンゲージメント」の高さを継続的に維持している企業は、そうでない企業に比べて営業利益率が約3倍高い。【参考:タワーズワトソン(現ウイリス・タワーズワトソン)プレスリリース】
エンゲージメントスコア向上は売上/純利益向上に効果的である。また、エンゲージメントスコアが低い企業は業績が安定しない傾向があり、逆にエンゲージメントスコアが高い企業は、その高さが安定した業績を支えている。
エンゲージメントスコアとROE(自己資本比率)には正の相関関連がみられ、エンゲージメントスコアが継続的に高い企業はROEも高い傾向にある。【参考:「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開/「企業価値評価における従業員エンゲージメントデータの活用可能性」に関する分析結果を公開)」】
離職率の低下
ワークエンゲージメントスコアが高い企業ほど「3年前と比較し、労働生産性(時間あたりの成果)が向上している」と感じている傾向がある。ワークエンゲージメントと企業の労働生産性には、統計的優位に正の相関があることが確認され、1単位のワークエンゲージメントのスコア上昇は、企業の労働生産性を1〜2%ほど上昇させる可能性が示唆されている。【参考:ワーク・エンゲイジメントと企業の労働生産性について│厚生労働省:令和元年 労働経済の分析】
しかし、2023年の日本の従業員エンゲージメントは前年から1ポイントアップしたものの、わずか6%(世界平均23%)で、調査対象の139カ国中137位と、エジプト(6%)、香港(6%)と並び世界で最下位【参考:State of the Global Workplace: 2024 Report.】
企業寄付・従業員寄付の概要
寄付の種類
- マッチングギフト:従業員が寄付した金額に対して企業が同額を寄付。
- 給与天引き寄付:従業員の給与から一定額を自動的に寄付するプログラム。
- ボランティア活動の支援:企業が従業員のボランティア活動時間を給与支払い対象として認める。
企業寄付と従業員寄付の違い
- 企業寄付:企業全体の社会貢献活動。
- 従業員寄付:個々の従業員が主体的に参加する寄付活動。
企業寄付と従業員寄付がエンゲージメント向上に寄与する理由・データ
社会的意義の共有
従業員が寄付活動を通じて社会貢献に携わることで、企業のビジョンや価値観を実感します。これが、個々人のモチベーション向上につながります。
チームワークと社内文化の強化
チームで寄付活動に取り組むことで、従業員間の信頼関係が構築されます。また、社内文化がポジティブに変化します。
離職率低下と採用活動への効果
社会貢献活動が活発な企業は、従業員の満足度が高まり、離職率が低下します。同時に、求職者へのアピールポイントにもなります。
具体的な導入方法
プログラム設計のステップ
- 目的を明確化:従業員エンゲージメント向上をゴールに設定。
- 対象を選定:寄付先や活動分野を従業員と一緒に決定。
- 運用の仕組みを構築:寄付プロセスを簡素化。
プラットフォームやツールの活用
寄付プログラムの管理に特化したツール(例:Syncable)を活用することで、管理負担を軽減します。
コミュニケーション戦略
寄付プログラムを効果的に伝えるための内部広報を行い、従業員の理解と参加を促します。
実施時の注意点
透明性の確保
寄付金の使途を明確にすることで、従業員の信頼を得られます。
社内外のステークホルダーの理解を得る
寄付活動が企業利益と両立する点をステークホルダーに説明します。
負担感を軽減する方法
給与天引きやワンクリック寄付を導入することで、手間を最小限に抑えます。
従業員エンゲージメントと寄付の関係値の効果検証
1. 寄付参加率
- 説明: 従業員全体のうち、寄付活動に参加した割合
- 意義: プロジェクトへの関与の広がりを測定。まずは多くの従業員に「行動」を促す基礎指標として機能
- 適用フレームワーク: AIDAモデル(興味を引き、行動を促す)
2. 寄付後の社会課題認知度向上
- 説明: プロジェクト開始前後で、社会課題に関する知識や理解度の変化を測定(例: アンケート)
- 意義: 自分ゴト化の第一ステップである「知識の向上」を数値化
- 適用フレームワーク: ロジックモデル(認知→行動→結果)
3. 寄付活動に対する共感スコア
- 説明: 活動内容や寄付先に対する「共感」や「意義を感じたか」をアンケートで可視化
- 意義: 社会課題と従業員個人との「感情的・情動的なつながり」を評価
- 適用理論: 心理的所有感理論(Psychological Ownership)
4. 寄付活動を通じた従業員満足度の向上
- 説明: 寄付活動をきっかけに、仕事への満足感や自己効力感が向上したかを測定
- 意義: 社員エンゲージメントの向上を示す間接的な指標
- 適用フレームワーク: ガラップ社のQ12エンゲージメント測定
5. 寄付先活動へのボランティア参加率
- 説明: 寄付にとどまらず、寄付先の活動にボランティアとして参加した従業員の割合。
- 意義: 行動変容の次なるステップとして、社会課題への深い関与を測る指標。
- 適用フレームワーク: トランスセオレティカルモデル(行動変容段階理論)。
6. 寄付活動に関する社内ディスカッションの活性度
- 説明: 社内チャットツールやアンケートで、寄付活動に関する意見交換や発言数を測定
- 意義: 社会課題を「自分たちの議題」として扱い始めたかを示す指標
- 適用フレームワーク: 学習する組織(Senge, 1990)
7. 寄付活動に関する従業員の自発的な発信数
- 説明: SNSや社内ツールで、寄付活動や社会課題についての投稿数を追跡
- 意義: 自分ゴト化が進んだ場合の自然発生的なアウトプットを評価
- 適用理論: コミュニケーション効果モデル(McGuire's Input-Output Matrix)
8. 寄付活動をきっかけとした新規プロジェクト提案数
- 説明: 社内で、寄付活動に関連する新規プロジェクトやビジネスアイデアがどれだけ生まれたか
- 意義: 社会課題が企業活動のインスピレーション源となる度合いを測定
- 適用フレームワーク: オープンイノベーション理論
9. 社会課題の重要性認識スコア
- 説明: アンケートで、社会課題の解決における企業や個人の役割に対する意識の変化を測定
- 意義: 社会課題を重要視する文化が形成されているかの指標
- 適用理論: 利害関係者理論(Stakeholder Theory)
10. 寄付活動を通じた社外評価の変化
- 説明: 従業員寄付活動がメディアや社会的にどう評価されたか(例: CSRレポート、メディア露出)
- 意義: 社会課題への取り組みが社内外で価値を生んでいるかを測定
- 適用理論: CSR(企業の社会的責任)モデル
これらのKPIを設定する際は、短期的なアウトプット指標(寄付参加率、認知度向上など)と長期的なアウトカム指標(共感スコア、行動変容など)をバランスよく組み合わせることが重要です。また、測定には定量データ(参加率やスコア)と定性データ(自由回答や事例収集)の両方を活用すると、より精緻な分析が可能です。
出典:パス解析とは?共分散構造分析との違いもわかりやすく解説
また、多変量解析の手法である共分散構造分析を利用したパス図に落とし込み、パス図とは、エンゲージメントや仕事の資源などの構成要素間の関係性や影響力を矢印を用いて表現した図を指します。影響力は構成要素間の関係性の強弱をもとに算出されます。
これにより、寄付という体験がどのような思考・感情につながり、最終的に従業員エンゲージメントに転化されているのか?を把握することが可能です。
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